労働組合の総本山、連合が迷走している

労働組合の総本山、連合が迷走している。高収入の専門職を労働時間規制の対象から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)を盛り込んだ労働基準法改正案を容認する唐突な方針転換に傘下の労働組合が反発、撤回に追い込まれた。連合執行部の求心力低下は避けられない。

 ◇幻の政労使合意
 札幌市のホテルで27日まで2日間開かれた連合の会合。幹部らの表情は一様に硬かった。ポピュリズム台頭や人工知能(AI)といったテーマの夏季セミナーの裏で、労基法改正案への対応をめぐって三役会と中央執行委員会が臨時開催されていたからだ。

 連合は、2015年4月の国会提出以来、反対の立場だった。連合が支援する民進党など野党も「残業代ゼロ」法案と批判している。ところが今月に入り、連合は執行部主導で条件付き容認に転換し、傘下労組は意見の積み上げによる合意形成がないとして反発した。21日に行われた前回の中執委では「傘下の組合に説明がつかない」(連合の地方組織幹部)との異論が相次ぎ、政労使合意への了承取り付けを見送る異例の事態に発展。事態収拾には容認撤回しかなかった。

 「コミュニケーション不足だったことは反省をし、率直におわびをしたい」。神津里季生会長は中執委の冒頭で陳謝し、日の目を見るはずだった政労使合意は幻となった。

 ◇遠因は法案一本化
http://blog.crooz.jp/fajpoewripjpo/ShowArticle/?no=2
http://www.68newspaper.net/article_detail.php?article_id=6220
 連合迷走の遠因は、今年3月に政府がまとめた「働き方改革実行計画」にある。同計画には働き方改革の柱である残業上限規制が盛り込まれており、高プロ導入を盛り込んだ労基法改正案との一本化が当然予想された。

 連合は、政府に働き掛けてきた残業上限規制を「労基法70年の歴史の中で画期的」(神津会長)と自賛している。高プロへの反対を貫けば、残業上限規制の実現は遅れる。ジレンマを抱えて焦った執行部は、逢見直人事務局長を中心に対策を検討。健康管理面強化の観点から政府に高プロ修正を要請する苦肉の策に出たが、この戦術が裏目に出た。

 ◇過労自殺への懸念
 「労働界では法案の修正要請は容認を意味する」(産業別労組幹部)という。執行部は反対の旗は降ろしていないと強調したが、連合の組織内では「容認への方針転換」と受け止められた。

http://www.68newspaper.net/article_detail.php?article_id=6219
https://4meee.com/favorites/view/1417352
 ある連合関係者は「良かれと思ってやったことだ」と執行部の行動に理解を示しながらも、「過労自殺が相次ぐ中、その歯止めの象徴として高プロ(に対する反対)がある」とつぶやいた。末端の労働者と接する機会の多い傘下労組の幹部には、労働時間規制の適用除外に対する懸念が根強い。

 安倍政権との協調路線を進めてきた執行部への不満も、この問題を機に一気に噴き出した。27日の臨時中執委で執行部の責任を問う声は出なかったが、連合内部や傘下労組に対する説明不足には不満がくすぶっている。ある中執委参加者は「これからの戦い方、民進党との連携や各団体との信頼関係の再構築が問われる」と危機感を強める。